夜風のささやき

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「池の跡」 ちょっと怖い話2016


暑くなってきたのでちょっと怖い話でも、、。

50代の主婦Rさんの若い頃の話。

Rさんの娘がまだ2歳だから、25年くらい前のこと。
7月に法事で東京から山形のT市の実家に娘を連れて帰ったことがあった。
実家は果物を作っている農家で敷地には果樹園の他、納屋、作業場と広い庭があった。

帰省して彼女は庭の端にある小さい離れに泊まった。部屋は六畳と四畳半の二間で普段は客を泊めるのに使っていた。Rさんが物心ついた時からこの離れはあったが泊まるのは初めてだった。

その日は午後、離れで娘の添い寝をしていた。
娘を横にしてうとうとしてるとなにか足元を這い回る気配がした。飼ってる猫が忍び込んだだろうと、気にもせず目を開けないでいた。
しばらくすると、その這い回る気配は足元からタオルケットに入り込み、やがてふんわりしたものが足腰からお腹、胸まで這い上がって来た。Rさんは猫ではなく2歳になっても乳離しない娘がおっぱいを求めて来たのかと思い目を開けた。しかし、胸に乗っているはずの娘は横に寝ていた。
胸にはふわふわしたものが張り付いて蠢いている。Rさんは初めて恐怖を感じ声を出した。するとふわふわしたものは胸から頭まで這い上がって来た。タオルケットから出てきたのは幼い女の子の顔だった。そしてRさんの顔の鼻先でニッコリするとスーッと感触とともに消えてしまった。
Rさんはもう眠ることは出来なくなり、娘を起こし母屋に戻った。夢だったか、入眠時に起こる幻覚か考えたが、あまりにも感触がはっきりしていた。
夕飯時、そのことを家族に話した。
家族は黙って聞いていたが、やがてRさんの父親が今まで言わなかったがと断り、口を開いた。
あの離れの場所は元々は池だったが埋めて家を建てた。
50年以上も前、2歳の幼児がその池に落ち溺死したという。
その子は父親の妹でRさんの叔母にあたる。
事故の時、その子の母親つまりRさんのお婆さんはRさんと同い年だった。
そのあとに池を埋めて離れを建てたのだという。
Rさんは溺れ死んだ叔母の霊が彼女を母親が来たと思い出てきたのではないかと話していた。

※このシリーズは、筆者が体験したか、体験した本人からの話です。噂やまた聞きはありません。

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