夜風のささやき

言霊 謎 狂気 廃墟 廃人

友人の死。近藤誠くんの思い出。

誠よ。君は本当にうるさく、やかましい奴だった。
集まるとその会話の9割を1人でしゃべり続けた。
なんでも日本で1番最初に自分がそれをやったというのが口癖だった。

日本で1番最初にウーロンハイを飲んだ。
日本で1番最初に写真屋のホームページを立ち上げた。
日本で一番早くブログを書いた。
日本で1番のフォトショップの使い手だった。
東京で1番早くアライグマを目撃した。等々。

とにかく日本一、東京一のオンパレードだった。
でも君は心からそう信じていたに違いないし他の人にとって一番だろうが一万番だろうがどうでも良いことだった。

最近はいつも作務衣を着ていた。多分太り過ぎて既製服が着れなかったのだろう。

2人で話すと本当に素直な奴だった。
もう30年以上前の事だった。
高校の生徒会の評議会の後、僕の後をヒョコヒョコ付いて来て「先輩、演劇部ですよね。僕も入れて下さい」と声をかけて来たのが最初の出会いだったね。
良くうちに来て高校生の癖にみんなで酒飲んだよね。
母親いなかったからうちは治外法権だった。そもそも保谷高校は生徒が酒飲んでても咎める先生がいなかったという不思議な学校だったね。
君はうちでの酒盛りでほぼ意識不明になり、仕事から帰ってきた親父が呆れて一緒に泥酔していた梅田ユミコと一緒に車で自宅まで送って行ってくれた。その後、梅田ユミコに僕は呼び出され「私、センパイのお母さんになりたい」と訳のわからないことを言われた。要するに父親のいない彼女は僕を差し置いてやさしい親父に惚れたとのことであった。立場がなくオロオロしていた僕の代わりに「お前なあ、、」と彼女を諭してくれたのも君だった。

しかし、学校の掲示板にうちでの酒盛り、喫煙の饗宴模様の写真が貼り付けられたときには参った。
誰が貼り付けられたかは定かでないが、君が撮った写真だった。
当時書記だった黒マリが掲示物に生徒会長印が押してないと剥がして持ってきた。掲示権が生徒会長にあるのも変な高校だった。黒マリは先生が掲示したものも生徒会長印がないとどんどん剥がして来て閉口したが彼女も君のクラスメイトだったね。

演劇部の謝恩会公演で君らの学年で「春雷」というホームドラマを演じた。
君が父親、渡部まりこが母親、中沢が兄、平松アツコが妹。
君ははまり役で会場は誰も観てなくて騒然としていても君は浴衣を着て一生懸命演技していたのを良く憶えている。

あれから30年以上、しばらく付き合いは途絶えたが、四年ほど前に再会した。
最近は輸入したサプリと水のおかげで生まれてから1番調子が良いとPTA会長やら自治会長やら務めていた。本業の写真屋も忙しくしていた。そんな中、僕に本業の写真屋のコンサルタントなども依頼してくれた。本当に素直に僕の意見を聞いてくれた。
身分証明書写真は無料で撮って何枚も現像してくれた。
面倒見の良いやつだった。
先月には日暮里の中国通のEC授業も一緒に受けたね。
その後電話で声を聴いたのが最後だった。ECで出品物の相談だった。

君は四国に旅行に行って帰ったあと朝突然逝ってしまった。
虚血性心不全だという。苦しむ時間が短くそれがせめてもの救いと思う。

誠よ。君がいないと世の中静かになりすぎて寂しいじゃないか!


合掌。


近藤 誠 近影。
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高校演劇部尾瀬夏合宿。
1番左が近藤くん。1番右が私。
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