夜風のささやき

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中国通EC授業 2 実習in新宿

さて、今回のEC授業の実習は新宿の書店で人気漫画作家のサイン本を手に入れるというものだ。つまり「淘宝(タオバオ)」に出品する商品の仕入れの実習である。
こう書くと簡単に聞こえるが、たやすく手に入るものでは価値が無い。

午前6時半。JR新宿駅東口に集合。S先生と受講生メンバーが揃う。授業が一緒のHさんの顔も見える。こんな朝早く行ったってまだ書店は空いて無いだろうに、、???

前日の座学の授業で予めターゲットの商品をS先生より指定された。ターゲットは一冊や二冊ではない。
実はS先生は日本のコミック、アニメの大ファンである。マニアだといっていいだろう。先生は日本のコミック、アニメに触れるため日本に来たんだという。そして「淘宝(タオバオ)」を活用してコミックと関連商品を売っている。中国にはたくさんの日本のコミック、アニメのファンがいるらしい。先生には中国在住のたくさんの顧客が居てしかも組織化している。
これは理にかなった商売だ。マニアは欲しいモノに金と労力は惜しまない。
この場合は中国にいるマニアたちが金を出す代わりに先生は日本に居て労力を提供する。
まさに需要と供給のバランスがいいし顧客の囲い込みもしている、手堅いビジネスだ。
「淘宝(タオバオ)」でも店の評価点が表示されている。ユーザーはそれを見て店を選択する。商品はまちがいないか、迅速か、問い合わせに誠実に対応したか、梱包はしっかりしているか、などなどを5点満点で評価される。S先生の店は5点満点である。これはスゴイことである。

さあ、話は実習に戻る。会場の書店は地下のショッピングモールにある。6時半ではどこもシャッターは閉まっていて薄暗い。そんな中進むと書店のシャッターの前にはいるわ、いるわ。100人以上がひしめいてる。しかもほとんどが若い女性。よく見るとパーティションで5列ほどに仕切られた空間に整然と並んでいる。ここでは書店の係の人が整理券を配り、ズルイ奴がいないか監視している。僕たちも整理券をもらい、パーティションの中に入ってならぶ。僕は116番であった。書店が開くのが9時だと言うからまだ2時間以上ある。

「今回は昨日指定したものは手に入らないかも知れません。作戦立て直します」
S先生は冷静に言う。とても20代の若い女性とは思えない頼もしさだ。さすがにコミックマーケット百戦錬磨の風格。
とにかく、書店が開いてからの売れ行きを見守るしかない。床に座り込みHさんと世間話をしたりスマホでニュースを読んだりして過ごした。先生は3DSゲームをやっている。最近少し涼しくなったがまだ開店前の地下街は蒸し蒸しする。これが真夏であったらとても耐えられないだろう。
並んでいる面々には僕みたいな50代のオトコはいない。せいぜい30代である。しかし奇異の目で見られることも無い、みんな他人には無関心だ。S先生はここは戦場だという、なるほど戦場ならターゲットと自分しか関心は無くなるはずだ。

やがて9時になり書店が開く。しかし中に我先と殺到するのではなく、前から5人ずつ入店しコミックを選ぶ。今回は1人一種類3冊までと規定されている。多分、こういうルールが無かったら会場は本当に戦場と化しトロい僕は地下街の藻屑となってしまうに違いない。
一回5人ずつ入店なので列は一行に進まない。列が進むに連れ次々と完売情報が書店から発表されると溜息が一斉に出る。S先生は書店の前に貼り出されたコミックのリストを見ている。昨日の指定のものは全て完売なので安全に購入出来るものを判断して僕たちのためにメモしている。渡されたメモの数冊も次々に完売情報が流れる。僕もメモを見て溜息をつく。
11時半にさしかかった頃、ようやく僕らの番が回って来た。メモを見るとまだ3冊が残っていた。やっとの思いで入店する。しかしここでも1人ずつ順番に書棚に進み手に取りレジに進む。店の女性はとても親切で目の悪い僕がメモを見せると商品を取ってくれた。
レジに行き会計を済ませると、達成感が込み上げて来た。

店の外ではみんなが待っている。先生は僕のコミックをチェックする。
なんか子供の頃、初めて自転車に乗れたとき、鉄棒で逆上がりが出来たとき。その何とも言えない感情が湧いてきた。
おそらく、望んでも一生に無い経験だった。
感慨はさておき、今回学んだのは、机上ではない実地に即したマーケティングである。
僕は以前、広告会社に勤めていたのでいやと言うほどマーケティングを駆使した、いや駆使したつもりであった。しかし、身を持ってビジネスとしての商品に接したことはほとんど無かった、
次の実習は中野でグッズを自分で選ぶ実習だ。
実習はフィールドだけてなく、商品情報の制作、サイトUP、梱包、発送と続く。



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